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日経広告研究所、2020年度の広告費予測を発表 〜五輪効果が下支えし0.3%伸び〜

2020予測

日経広告研究所は2020年度の広告費が前年度に比べて0.3%増えるという予測をまとめた。19年10月の消費税引き上げ後、消費の回復が鈍く、新型肺炎拡大の弊害も懸念される。しかし、米中貿易摩擦の小休止や大規模な財政支出を背景に、景気腰折れの可能性は小さいとみられる。東京五輪・パラリンピックが開かれる夏は、テレビを中心に広告出稿の増加が期待される。新聞や雑誌はマイナスが続くが、減少率はやや縮小し、19年度に鈍化したインターネット広告は伸び率を高める。


 同研究所は毎年2月に翌年度の広告費予測をまとめている。経済産業省が毎月発表している「特定サービス産業動態統計調査」の広告業売上高を広告費の基本データとして使い、四半期ベースで広告費を予測している。今回は20年4-6月期~21年1-3月期を予測期間とした。

19年度は1.5%減と、3年連続で減少

 19年度の広告費は1.5%減少する見通し。3年連続のマイナスとなる。17年度の0.7%減、18年度の0.6%減と比べ、減少率は拡大する。米中貿易摩擦の激化により輸出が伸び悩んだほか、7~9月期に台風や河川氾濫などの自然災害が立て続けに起き、さらに10月の消費率引き上げを背景に個人消費が低迷し、企業の広告出稿意欲は弱まった。
 20年度は米中間で貿易摩擦に関する第1段階の合意がされ、世界経済への影響は薄らぐという見方がでている。また、国は19年度補正予算と20年度予算を通じ、13兆円を超す財政支出が決めており、一段の景気低迷に備えている。中国の新型コロナウイルスによる肺炎拡大など新たな懸念材料はあるものの、景気に対する安心感から20年度は広告費が0.3%増える見通しだ。
 媒体別にみると、20年度のテレビ広告は0.1%の微増が期待される。マスコミ4媒体の中でも五輪の影響が最も大きく、7~9月期はタイム広告の増加が予想される。各局はここ1、2年、スポット広告の減少に直面しており、マイナス傾向をどう食い止めるかがカギとなる。ラジオ広告もスポット広告の減少が続く。一時期、ラジオ広告全体を押し上げていた法律事務所や中古車販売といった特定業種に勢いがなくなり、20年度は2.2%減る見込み。
 新聞広告も五輪効果が期待されるが、20年度は5.5%減と、19年度よりもやや減少率が縮まる程度にとどまる。19年度は消費税引き上げ関連の広告に支えられ、7~9月期にプラスの伸びを記録するなど、広告の金額水準が高いことが影響する。雑誌広告は9.2%減が見込まれる。出版科学研究所によると、19年の雑誌販売金額はコミックス(単行本)の復調で4.9%減と、前年度の9.4%減から改善するが、週刊誌などの落ち込みは続いている。

インターネットは6.4%増と伸びを高める

 インターネット広告は17年度に9.2%増と4年ぶりの1ケタ増にとどまった後、18年度は7.4%増と伸び悩んだ。19年度はさらに4.0%増と鈍化する。キャッシュのユーザー属性を読み込んで、それに関連した広告を配信する「ターゲティング広告」に批判が高まり、さらにアドフラウドといったネット特有の問題が企業の広告出稿意欲をそいでいる。インターネット広告も景気動向の影響を受けやすくなったという見方もでている。
 ただ、20年度は動画広告がインターネット広告をけん引する。次世代通信規格「5G」の商用化を控え、企業は動画広告へ一段とシフトしている。こうした通信環境の進展も追い風に、20年度のインターネット広告の伸びは6.4%と、19年度の4.0%から高まる見込みだ。
 交通広告は1.6%増と、20年度も安定した伸びを見込む。紙媒体がマイナスの一方で、デジタルサイネージを活用した広告手段が広がっている。今夏の五輪開催に向けて駅改良工事が急ピッチで進められているが、デジタルサイネージの提供場所は一段と増設される予定だ。折り込み・ダイレクトメールは4.4%減と前年度並の減少が予想される。折り込みは主力の流通業の落ち込みがやや改善するが、不動産などは振るわず、枚数ベースでマイナス基調が続く。ダイレクトメールは弱含みにとどまる。
 予測値は日経広告研究所と日本経済研究センターが共同で開発した「広研・センターモデル」を使って算出している。広告費の動きは国内景気の動向によって説明できると仮定し、財務省発表の「法人企業統計」の経常利益と内閣府発表の名目国内総生産(GDP)の2つを説明変数に選び、このモデルに日本経済研究センターが予測している経常利益と名目GDPの伸び率を当てはめ、予測値を算出している。テレビ、新聞、雑誌、ラジオのマス4媒体や、交通、折り込み・ダイレクトメール、インターネットの各媒体の伸び率は広告費全体の動きから予測している。
※四半期ごとの媒体別広告費の増減率や「広研・センターモデル」のベースとなる景気予測を盛り込んだ詳細版は、後日(2月中旬以降)「会員専用ページ」にて公開予定です。

https://www.nikkei-koken.gr.jp/research/research.php?research=0&recno=795


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