電通、テレビ広告の投資対効果を最大化する「RICH FLOW(正式版)」提供開始
電通は、データアーティスト株式会社と共同で、AIを活用してテレビ広告枠の柔軟な運用を可能にする「RICH FLOW(正式版)※1」を提供開始しました。
2020年に開発したテレビ広告枠の組み換えシステム「RICH FLOW(β版)」に、新たに①「広告主間のテレビ広告枠の組み換え」と「広告主内の広告素材のアロケーション(割り付け)」を連携させる機能、②テレビの実視聴データを用いたオンライン・オフラインの統合マーケティング基盤「STADIA※2」と連携し顧客企業のマーケティングKPIに基づくテレビ広告枠運用を可能にする機能、③複数のKPIに合わせてテレビ広告枠を高精度に運用する機能を追加しました。
近年テレビ広告においては、性年代別のターゲット到達効率だけでなく、アプリダウンロード数や店舗来訪者数、天候データなどの外部環境に関するデータ、またそれらのデータにAI解析を加えた予測モデルの構築など、データ活用の多様化・高度化が進んでいます。一方で、従来のテレビスポット広告では、これらのデータに対応した出稿計画の変更や、複数のKPIに合わせた広告枠の運用が難しいという課題がありました。このような背景から、企業ごと、ブランドごとに異なるさまざまなKPIの達成に対応できる、柔軟なテレビ広告枠の運用がますます求められています。
電通は、「広告の効率化・高度化」によって顧客企業の成長に資することを目指し、2016年から、AI技術や各種データを活用したプランニングや広告枠運用の高度化などを推進しています。新たにリリースした「RICH FLOW(正式版)」は、電通が企画・セールスと運用、データアーティストが開発を担当しており、最適な広告枠の組み換えと広告素材のアロケーションの組み合わせパターンを、AIが短時間で効率的に探索する制御機構を実装しています。多様なデータや指標に合わせて、テレビCMをより効果的な広告枠に柔軟かつ自動で最適化し、テレビ広告の投資対効果を最大化します。
<「RICH FLOW(正式版)」によって実現すること>
①「広告主間のテレビ広告枠の組み換え」と「広告主内の広告素材のアロケーション」の連携
「RICH FLOW(正式版)」では、「RICH FLOW_MC(リッチフロー・エムシー)※3」と「RICH FLOW_SC(リッチフロー・エスシー)※4」の2つの機能を連携させることで、テレビ広告の効果を最大化します。「RICH FLOW_MC」は、複数の広告主間でテレビ広告枠の組み換えを行い、広告効果を向上させるための最適パターンを提案する機能です。AIを活用し、広告主のニーズに基づく最適な組み換えパターンを特定した上で、対応可能な放送局と連携し、適切に広告枠の組み換えを行うことで、より効果的なテレビスポット広告の運用を可能にします。「RICH FLOW_SC」は、広告主のブランドごとに異なる複数のテレビCM素材を、各ターゲット別に最適な番組にアロケーションする機能です。
②「STADIA」との連携による顧客企業のマーケティングKPIに基づくテレビ広告枠運用
従来型の性年代別の視聴率だけでなく、ウェブサイトの来訪数や成約数、店舗来訪者数、特定商材の購入数などのデータを活用し、顧客企業のマーケティングKPIに直結する指標を用いたテレビ広告枠の運用を可能にする「RICH FLOW powered by STADIA」を追加しました。
<「RICH FLOW powered by STADIA」概要>
③ 複数のKPIに合わせたテレビ広告枠の高精度な運用
GRP(延べ視聴率)を維持しながらTRP(ターゲット視聴率)を最大化する、態度変容・コンバージョン起点での複数の評価軸を同時に最大化するなど、顧客企業やブランドごとに異なる複数のKPIを同時に達成する複雑な広告枠の運用が可能です。また、天候や商品の売れ行きなど、市場の変化に合わせてテレビ広告の投下タイミングを効果的に決定し日別の目標GRP指定に対応することも可能となり、広告枠組み換えと広告素材アロケーションの精度を大幅にアップしています。
「RICH FLOW(正式版)」は、テレビ視聴率予測システム「SHAREST※5」を用いることで、より精緻な長期予測によって、ターゲットに効率よくテレビCMをリーチさせることが可能です。
<「RICH FLOW(正式版)」概念図>
また一部放送局においては、RICH FLOW_MCで特定した組み換えパターンを放送局側の営業放送システム(放送する番組やCMなどの関連情報を一元的に管理するシステム)に一括取り込みする機能が実装され、より機動的な広告枠の組み換えが可能になりました。今後もRICH FLOW_MCにおける放送局との連携を推進し、対応基盤を構築していきます。
電通は、組み合わせパターン探索のさらなる効率化と高速化を目指し、株式会社エー・スター・クォンタム(本社:東京都港区、代表取締役社長:船橋 弘路)※6、富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:時田 隆仁)※7などと連携し、RICH FLOWの演算処理への「量子コンピューティング技術や様々な数理最適化に基づく計算手法」搭載に向けた開発を推進しています。今後も電通は、「RICH FLOW(正式版)」の提供を通じて「広告の効率化・高度化」を推進することで、顧客企業の事業成長に貢献してまいります。
※1 電通はRICH FLOW技術について関連特許を取得および申請済み。今後も特許制度の目的に沿った適切な運用を推進。
※2 People Driven DMPと連携し、テレビメーカー由来のユーザーから同意許諾を得たテレビの視聴データに基づくデジタル広告配信・効果検証の統合マーケティングプラットフォーム。2022年9月時点で約1100万台のデータを保有。
※3 MC:Multi Client inventory exchange
※4 SC:Single Client multiple material allocation
※5 https://www.dentsu.co.jp/news/release/2022/0930-010554.html
※6 電通は2020年にエー・スター・クォンタムと業務提携。テレビ広告枠の最適化と運用の高速化による新たなマーケティングソリューションの開発・実装を推進。
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/1102-010268.html
※7 電通は、富士通が開発した「デジタルアニーラ」を活用し、テレビ広告におけるターゲットの接触回数最適化や接触者数最大化などを行うテレビCM素材の割り付けに関する独自のロジック、システムの構築を推進。「デジタルアニーラ」は、量子現象に着想を得た、大規模で複雑な組合せ最適化問題を高速で解くことができる計算技術。