松竹、25年2月期決算は減収・赤字転落 不動産好調も映像・演劇関連苦戦
松竹は、2025年2月期の連結決算を発表しました。売上高839億7400万円(前期比1.7%減)、営業利益16億6400万円(同53.6%減)、経常損失25億円(前期は28億6600万円の利益計上)、最終損失6億6400万円(同30億1600万円の利益計上)でした。
映像関連事業
売上高は437億3900万円となり、前の同期比で4.5%減少いたしました。セグメント利益は4億3500万円となり、同83.0%の減少となりました。
邦画14作品、洋画6作品、アニメ9作品、シネマ歌舞伎、METライブビューイング、松竹ブロードウェイシネマ等の作品を公開いたしました。「九十歳。何がめでたい」「あのコはだぁれ?」「Mrs. GREEN APPLE // The White Lounge in CINEMA」「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」が興行収入10億円を超えるヒットとなり、3月までに「366日」は25億円、「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」は30億円を超える大ヒットとなりました。11月公開の「正体」は、第48回日本アカデミー賞で最優秀監督賞、最優秀主演男優賞、最優秀助演女優賞を含む最多12部門で受賞するなど、高い評価を受けました。
興行につきましては、松竹マルチプレックスシアターズにおいて、各劇場で対抗館対策、注力作品での取り組み等で成果をあげており、ヒット作の確保や幅広い動員獲得を目指してまいりました。興行では、興行収入100億円を超えた「名探偵コナン100万ドルの五稜星(みちしるべ)」「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」をはじめ、アニメ作品が大ヒットとなり、年間興行収入に貢献いたしました。また、台風被害により休館していたMOVIX八尾が11月に営業を再開し、収益に貢献いたしました。売店部門ではスマートオーダーの導入を行い、売場での提供環境が改善したことで利用率が向上し、収益に貢献いたしました。
テレビ制作では、地上波で連続ドラマ「Qrosの女」、BS放送で「無用庵隠居修行8」、連続ドラマ「雲霧仁左衛門ファイナル」「めんつゆひとり飯2」、CS放送で「鬼平犯科帳 でくの十蔵」「鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛」を制作いたしました。番組販売では、10年ぶりに鬼平犯科帳DVDマガジンの再販売や、「鬼平犯科帳第1シリーズ」(全26話)や「必殺仕事人」(全84話)、BS放送局に市原悦子主演「岸壁の母」他を販売し、好調に推移いたしました。
映像版権に関しまして、DVD・ブルーレイディスク販売は、邦画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」「あのコはだぁれ?」「赤羽骨子のボディガード」「恋を知らない僕たちは」、アニメーション作品「ブルーアーカイブ The Animation」「アストロノオト」等、豊富なラインナップで発売し、好調に推移いたしました。旧作では、「男はつらいよ」55周年事業の一環として、第1作を松竹初の4K UHDで発売いたしました。配信は、定額見放題サービス(SVOD)では、「おまえの罪を自白しろ」をAmazon Prime Videoで独占配信し、売上に大きく貢献いたしました。
CS放送は、松竹ブロードキャスティングにおいて、放送料収入の拡大のため、ケーブルテレビ局への新規導入営業に力を入れており、新たに10局程度の導入が決定いたしました。また、小田和正やTHE ALFEE等、視聴意欲の高いファンが多いアーティストの番組を編成することで、新たな顧客層の獲得に寄与いたしました。
演劇事業
売上高は238億0200万円となり、同2.3%減少いたしました。セグメント損失は11億8200万円となり、前年同期はセグメント損失7億0400万円でした。
歌舞伎座においては、古典から新作歌舞伎まで、幅広い演目をユーザーに提供いたしました。6月の「六月大歌舞伎」では、中村萬壽、中村時蔵襲名披露を行い、祝祭色豊かな興行となりました。8月の「八月納涼歌舞伎」では、京極夏彦脚本の新作歌舞伎「狐花」が上演され、大きな話題となり、盛況となりました。9月の「秀山祭」から2月の「猿若祭」も、各月多彩な公演を揃え、前の期を上回る成績を収めました。インバウンド対応として、7月から英語字幕タブレットの貸し出しも開始いたしました。
新橋演舞場においては、4月の「祭 GALA」、5月の「トンカツロック」、6月の東京喜劇 熱海五郎一座公演、9月の「MASSARA」、10月の「劇走江戸鴉~チャリンコ傾奇組~」、11月の「舟木一夫シアターコンサートin 新橋演舞場」、11月・12月の歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」、2月の「三婆」が好成績を収めました。
3月のスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」、7月の「七夕喜劇まつり」、8月のOSK日本歌劇団「レビュー 夏のおどり」、「カルメン故郷に帰る」、11月の「有頂天家族」、1月の「双仮名手本三升 裏表忠臣蔵」、2月の「浪人街」も大変好評を博しました。
大阪松竹座においては、3月の「おいでよ!ミナミ笑店街」、4月のOSK日本歌劇団「レビュー 春のおどり」、5月と11月の「松竹新喜劇」、8月の「関西ジュニア サマバケ2024」、9月の「カルメン故郷に帰る」、11月の「夢見る白虎隊」、12月の「WEST.10th Anniversary 大阪松竹座公演」等、多様な一般演劇公演を実施いたしました。歌舞伎公演では、6月のスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」、十三代目市川團十郎白猿襲名披露の掉尾を飾る10月の「十月大歌舞伎」に加え、1月の「坂東玉三郎 初春お年玉公演」「片岡仁左衛門 坂東玉三郎初春特別公演」は大好評を博し、収益増に繋げることができました。
南座においては、3月の「三月花形歌舞伎」や、6月の「坂東玉三郎特別公演」、7月のOSK日本歌劇団「レビュー in Kyoto」、8月の坂東玉三郎演出作品「星列車で行こう」、9月の九月花形歌舞伎「あらしのよるに」、10月の藤山直美出演「錦秋喜劇特別公演」等はいずれも好評を博しました。12月の松竹創業130周年の劈頭となる「吉例顔見世興行」は大いに盛り上がり収益増に繋がりました。淡路島が舞台となった1月の「松竹新喜劇」、2月の有吉佐和子の名作「三婆」も好評を博しました。
その他の公演に関しましては、一般演劇公演として、9月に日生劇場でミュージカル「三銃士」、1月に三越劇場で「おちか奮闘記」を上演し好評を博しました。歌舞伎公演では、THEATER MILANO-Zaにおける5月の「歌舞伎町大歌舞伎」、1月の「新春浅草歌舞伎」では花形俳優陣の奮闘が好評を得ました。巡業公演では、5年振りとなる「四国こんぴら歌舞伎大芝居」が再開し、7月の中村獅童親子共演による「公文協松竹特別歌舞伎」や、11月の「公文協松竹大歌舞伎」が大きな収益をあげました。
受託製作の歌舞伎公演は、3月に平成中村座を十八世中村勘三郎十三回忌追善として「名古屋平成中村座 同朋高校公演」、5月に園座、10月に博多座においてスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」、立飛グループ100周年の記念として「立川立飛歌舞伎特別公演」、出石永楽館「第十四回 永楽館歌舞伎」、また2月の博多座では歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」が上演され、彩り豊かな公演が並び好評を博しました。
シネマ歌舞伎は、「刀剣乱舞ONLINE」を歌舞伎化し話題となった「刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)」と、片岡仁左衛門、坂東玉三郎が共演した2010年2月歌舞伎座公演「ぢいさんばあさん」を再編集し新たに公開いたしました。「月イチ歌舞伎」シリーズも継続し、「桜姫東文章 上の巻/下の巻」、NEWシネマ歌舞伎「三人吉三」、「阿古屋」等、根強い人気の作品を上映いたしました。
配信に関しましては、5年振りの開幕となった「四国こんぴら歌舞伎大芝居」を現地から同時生配信し、特典映像として「ようこそ金丸座へ」を制作いたしました。松本幸四郎が金丸座の舞台裏を発表した「バックステージ・ツアー」や、中村雀右衛門、中村鴈治郎ら出演者と関係者が語る「スペシャルインタビュー」等、ここでしか観られない映像をふんだんに使った配信限定コンテンツとして人気を博しました。「歌舞伎オンデマンド」では、毎月の歌舞伎座の公演を翌月配信するサービスや海外配信も継続いたしました。「流白浪燦星(ルパン三世)」の舞台映像に英語字幕をつけて、世界配信も行いました。歌舞伎俳優によるオンライントークショー「歌舞伎家話」「紀尾井町家話」は引き続き、定番コンテンツとして好評を得ました。
不動産事業
売上高は139億5500万円となり、同8.7%増加いたしました。セグメント利益は58億1000万円となり、同5.5%増加いたしました。
不動産賃貸では、入居テナントとの綿密なコミュニケーションと良好な関係構築に努めることで、歌舞伎座タワーや銀座松竹スクエア、銀座2丁目松竹ビル・同ANNEX等、主要物件の高稼働により安定収益を確保いたしました。これらにより、通期では当初計画を上回る収益貢献となりました。
また、まちづくり事業として中長期戦略である東銀座エリアマネジメント活動においては、新たにとまちづくり推進協議会に賛同・入会する企業も加わり、街の賑わい創出イベントを開催するなど、地域貢献とエリアの価値向上のための取り組みを一層強化いたしました。
その他の事業
売上高は24億7600万円となり、同2.2%増加いたしました。セグメント損失は2億3400万円となり、同セグメント損失5億5600万円でした。
各事業でのオンラインによる商品販売の強化を図りつつ、人気シリーズ作品やコア層向けの商品開発・販売を主軸に展開いたしました。また、新規事業領域における事業展開については、コストを抑制しつつも、これまでにない企画やコンテンツ開発に注力し、他業種企業との新しい取り組みや基盤づくりを進めました。
プログラム・キャラクター商品に関しましては、「Mrs. GREEN APPLE // The White Lounge in CINEMA」「赤羽骨子のボディガード」「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」等の作品を中心に収益に貢献いたしました。
イベント・オンライン配信は、ホラーコンテンツ「松竹お化け屋本舗」は、ゲームプラットフォーム「フォートナイト」でオリジナルマップ「呪園」をプロデュースし、4月と5月にリアルイベントを企画・制作いたしました。また、7月に丸の内ピカデリー100周年記念「浪漫活弁シネマ~ 映画『青春の夢いまいづこ』篇~」、1月に「PSYCHO-PASS サイコパス 京都南座歌舞伎ノ舘×こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎」を開催、2月に日本の伝統音楽と最新EDMを組み合わせた革新的音楽イベント「ZIPANGU the Party!!」を開催して話題となりました。ゲーム事業においては国内外のデベロッパーと組んでゲームの開発・販売を開始、「バックパック・バトル」「進撃の巨人VR: Unbreakable」等のタイトルが好評を博しました。
2026年2月期の見通し
2026年2月期の業績は、売上高950億円(同13.1%増)、営業利益31億円(同86.2%増)、経常利益30億円(前期は28億6600万円の損失計上)、最終利益20億円(同30億1600万円の損失計上)、EPS145.55円と大幅な営業増益、経常・最終黒字転換を見込んでおります。株価収益率は95.4倍となる見込みです。