23年度の広告苦情は8,727件で「医薬部外品」が最多【日本広告審査機構調査】
日本広告審査機構(JARO)は、2023年度にJAROへ寄せられた広告苦情における審査概況を発表しました。総受付件数は1万874件で、そのうち苦情は8,727件であり、コロナ前の2018年度並みの件数となりました。
苦情の上位5業種は、医薬部外品、医薬品、化粧品、オンラインゲーム、電子書籍・ビデオ・音楽配信です。特に医薬品、オンラインゲーム、電子書籍・ビデオ・音楽配信などが増加しました。一方、化粧品は前年度に続いて大きく減少しました。
業種別で見ると、苦情の件数がもっとも多かったのは医薬部外品で491件です。2022年度の過去最多件数(510件)から若干減少しましたが、引き続き業種別で最多となりました。また、医薬部外品に寄せられた苦情は、広告主10社余りに集中しているのが特徴です。商品は育毛剤、除毛剤、美容液、クリーム、歯磨き、整腸剤などでした。
育毛剤では、使用前後写真を用いて過度な発毛効果を表示しながら「個人の感想です」と打ち消す表示を行っていることへの“疑義”が指摘されました。また、薬用歯みがきでは、歯の白さを強調した使用前後写真が加工もしくは別人であるなど、体験談が虚偽であることが多数寄せられました。
媒体別の苦情件数では、インターネットが最も多くの4035件でした。インターネットは2020年度に苦情件数の最多を記録した後、減少が続きましたが、今期は前年度比100.8%と微増しました。テレビは1割減少し、ラジオは1割増加しました。
媒体別の苦情数のトップであったインターネットの内訳を見ると、上位は業種別と同じく医薬部外品369件(前年度比108.5%)でした。次いで医薬品274件(104.8%)、電子書籍・ビデオ・音楽配信230件(113.3%)で、いずれも増加しました。
一方、テレビで最も寄せられた苦情の業種は医薬品の139件(同136.3%)でした。しかし、前年度と比較すると80.0%減少しました。苦情の件数が増加したのは、事業者向け商品・サービス109件(同198.2%)、企業広告103件(同145.1%)などでした。
苦情の対象は、「表示」「表現」「手法」の3つに分類されます。苦情の「表示」は虚偽・誇大、分かりにくさなどを指し、「表現」は広告で描かれているものが不快、好ましくないといったものを意味します。そして、「手法」はCM音量、広告の頻度、迷惑な表示方法を指します。
特に「表示」の苦情内容には、「価格・取引条件等」と「品質・規格等」があります。「価格・取引条件等」については、苦情全体に対する構成比ベースで増加傾向(21年度22.4%、22年度24.3%、23年度25.4%)が見られます。「品質・規格等」は2020年度に急増(3,331件)しましたが、現在は減少傾向にあります。
「表現」については、例年では「音・映像」が多くを占めますが、2023年度では特に女性の描き方、特に性的表現が顕著でした。とくにオンラインゲームや電子書籍(コミック)での表現自体への不快感や掲載場所への無配慮という苦情が目立ちました。また、ジェンダー平等を啓発する広告に対しては、「偏見だと言われて不快」といった苦情が49件寄せられました。