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adjust、2017年上期のゲームマーケティングを振り返る「日本国内ゲーム事業ベンチマーク」を発表

AdjustがTGS2017で得たインサイトについてご紹介したいと思います。日本のゲーマーを獲得するにはどういうマーケティングの手法が最適かということを解明するため、データを詳細に分析した結果、市場の理解に必要となる新しいベンチマークを得ることができました。


リテンション率からエンゲージメントに至るまでの、日本のアプリゲーマーの分析、特にモバイルOS別に達成されたレベルを詳しく分析したいと思います。ベンチマークでは、iOSとAndroidを対象にして、有料で獲得したユーザーとオーガニックで獲得したユーザーについてその内容を比較します。 

手法

以下に示す全データは、Adjustを使用している日本のゲームアプリから2017年前半の6ヶ月間に収集した非特定化データを対象に抽出を行ったものです。このデータをモバイルOS(AndroidとiOS)別と獲得チャネル(有料またはオーガニック)別に分類しました。ここで言う「有料ユーザー」とは、広告キャンペーン経由でアプリをインストールしたユーザーで、「オーガニックユーザー」は、特定のソースへのアトリビューション無しにアプリをインストールしたユーザーを指します。

市場概要

日本のマーケットプレースの状況について、eMarketerで調べてみました。日本におけるスマートフォンユーザーは、2017年末の推定総人口1億2,748万4,450人に対し、5,890万人達すると予測されています。また、将来的にはモバイル所有者のさらなる成長が見込まれ、2020年の冒頭には、日本の人口の半数以上がスマートフォンを所有するであろうと予測されています。但し、旧式のフリップスタイルの携帯から新しいテクノロジーに乗り換えようとしないユーザーも依然として存在し、日本におけるスマートフォンの伸びは(少なくても隣国の中国に比べ)緩やかなものとなっています。

日本の成人は、1日あたり106分間スマートフォンを、業務中や通勤途中などで平均的に使用しています。eMarketer による地域のメディア広告費の分析によれば、消費時間という面では、視聴者にとっても広告費投下対象としても依然としてTV が優位になっています。それでもモバイルは、デジタル広告費 117億9,000万ドル内の56%におよび、非常に大きな部分を占めています。昨年に比べ、デジタル広告費の伸びは約10%となり、2016年との比較で2%以上の伸びを示した唯一のチャネルとなっています。

リテンション率

モバイルのベンチマークでよく比較する指標であるリテンション率について、これまで何度も話題にしてきました。リテンション率に着目することで、マーケターはアプリのパフォーマンスの推移をより正確に理解することができます。リテンション率は、ユーザーが少なくても1日に1回、アプリを起動したかどうかで決定されます。もしユーザーが戻ってこなければ、その値は低下していくからです。リテンション率が減少すると、ユーザーはそのアプリへの興味を喪失し、もうそのアプリに戻ることはないと解釈します。

以下のグラフに、30日間の経過日数別のリテンション率を示します。分かりやすいように、1日、7日、14日、21日、28日目のグラフは色付けし、実際の数値を表示してあります。ここで着目すべきは、日々の詳細な数値ではなく、相互に比較してどうかという点です。

adjust国内ゲーム市場

パフォーマンスという面では、通常オーガニックユーザーの方が有料ユーザーよりもリテンション率が高く、初日から 7日目までのリテンション率の減少が大きくなる傾向にあります。

Android のパフォーマンスは極めて典型的なものですが、日本の場合、アプリをオーガニックインストールしたゲーマーのリテンション率の方が、有料ユーザーよりもわずかに高くなっています。例えば初日は前者が41%であるのに対し、後者は39%をわずかに下回っています。

一方、iOSについては予想外の結果となりました。この場合、有料キャンペーンからインストールしたゲーマーの方が、オーガニックユーザーよりも継続日数が長かったのです。

adjust国内ゲーム市場

初日では、有料ユーザーの方がオーガニックユーザーよりも3ポイント上回る結果となっています。

こうしたリテンション率の傾向は、22日目まで続いています。これには非常に驚きを覚え、日本のアドテクノロジーとゲーム市場に詳しいAdjustのMicheal Paxmanにその理由を尋ねてみました。

「日本のゲーマーは、ゲームに登場する有名な IP(キャラクター)と ”協力” しながらゲームを進めることが多いのです(パズドラでハローキティと組むなど)。このようなキャンペーンによって、一度離れたユーザーをゲームに連れ戻すことで、リテンション率を相対的に高めているのです。日本のゲーム市場は、似たようなタイトルやニッチなゲーム分野がひしめく、競争の厳しい市場です。このため、著名なゲーム同士がお互いの機能を融合したり、別のゲームのキャラクターを採用したりするなど、相互に恩恵が発生するような形態を取っています」

「このため、クロスアプリでのプロモーションがモバイルマーケターの最も効果的な手段となっています。これはリタゲを超えるものです(これらの企業は、通常リタゲキャンペーンを行いません)。しかし我々は、何らかの広告形態によってアプリに誘導され、エンゲージされたユーザーは、クロスプロモーションによってもエンゲージされやすいと考えています」

「また、類似するアプリから広告経由で別のアプリにやって来る(iOSの)ユーザーは、クロスプロモーションによって、オーガニックユーザーよりも 1週間ほど継続期間が長く、その一部は ”試しにやってみる” という形態のユーザーであると確信しています」

セッション

セッションとは、ユーザーが実際にアプリを使用している時間のことです。この指標を見れば、実際にユーザーによるアプリの使用状況を把握し、ユーザーが何度アプリを動かしたかを知ることができます(新しいセッションは、30分間隔毎にトラッキングされます)。

Adjustの調査によれば、セッションの状況にはバラつきがあり、その一部を下図に示しました(数が非常に多いためグラフには音楽やパズル、アーケードゲームといったカテゴリー別の概要を示してあります)。また、最も優れたパフォーマンスのアプリのカテゴリーをグラフ上にハイライトしました。

adjust国内ゲーム市場

音楽ベースのゲーム(リズムゲームなど)はユーザーのエンゲージが高く、有料で獲得したユーザーにおいては、スポーツ、レース、パズルゲームなどが、日本の Android ユーザーでは高いエンゲージを示しています。

adjust国内ゲーム市場

iOSでは、際立ったオーガニックアプリは存在しません。しかし、有料で獲得したユーザーにおいては、ロールプレイやパズルゲームのエンゲージが高く、特にAppleのデバイスの場合、シミュレーションアプリが突出する形で高くなっています。

Michael によると、「これは非常に的を得たゲームコンテンツだと思います。特にRPG、シミュレーション、パズルゲームは、毎日長時間プレイするものです(但し体力の続く限りですが)」

「また重要となるのは、日本人の平均的な片道通勤期時間が45分であり、これらのジャンルは、最も価値の高い購買層であるサラリーマンにも非常に人気が高いものであるという点です。従って平日は、1ユーザーあたり約 2回のセッションが発生することになります」

達成レベル

従来からのベンチマーク指標だけでなく、レベルの征服数を比較しました。我々が知りたいのは、あくまでOSや獲得チャネル別のインゲームエンゲージメントですが、下図に示すように、その内容からは興味深い結果が見て取れます。
adjust国内ゲーム市場

グラフは、30日期間でユーザーをサンプル抽出し、「レベル」の達成数を集計したものです。1日における達成レベル数を比較したところ、オーガニックのiOSユーザーが、最も多くのレベルを達成している一方で、有料のAndroidユーザーの達成レベルが最も少なく、その状態は29日目まで続いています。一般的にはオーガニックユーザーのプレイ量が一番多く、次第に減少していくものとなっています。

その点で、1日に3レベルをわずかに超える程度達成する有料のAndroidユーザーが、最も着実なゲーマーであると言えます。これにはいくつか理由があります。2つの有料キャンペーンのチャネルを直接比較すると、Androidのユーザーが着実にリエンゲージされている一方、iOSユーザーはキャンペーン当初のエンゲージメントは高いものの、最後までは続かないという結果になっています。

まとめ

これらのベンチマークの結果、プラットフォーム別に現在の広告費を見直し、それが市場動向に反するものであったとしても、日本ではiOSをリタゲの投資対象とする価値があると考えることでしょう。特にiOSのパズル、シミュレーション、ロールプレイングゲームという、3つの分野でのパフォーマンスを見ればこれは明らかです。

戻って来たプレイヤーへのリワードや、最近離脱したユーザーに対するインセンティブ付きリターゲティング広告が、長期的なLTVを重視するキャンペーンにおいて最も強力な戦略となるでしょう。

しかし特殊な市場(プレーヤーが飽和状態にあるなど)や出入りの激しいゲームの場合には、まだ成長の余地があります。日本はその内外がビジネスチャンスに溢れているため、将来的にも今回のような記事を通じて日本市場に注目し続けたいと考えています。

詳細:
https://www.adjust.com/ja/blog/japanese-gaming-benchmarks-what-happened-in-the-first-half-of-2017


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