DACとAcompany、プライバシー保護データ分析の実証実験に成功
DACとAcompanyは、国内でほとんど先例のない、デジタルマーケティング領域における、「秘密計算」(データを暗号化したまま計算できる技術)を用いたプライバシー保護データ分析の実証実験を行いました。その結果、パーソナルデータを秘匿したまま統合分析を行うことが可能で、プライバシー保護に有益なことが明らかになりました。また併せて、データ分析の精度や速度が実⽤レベルであるとの結果も得ることができました。今後両社は、秘密計算を用いたマーケティングデータ分析の手法確立に取り組み、これまで以上に安⼼・安全なデジタルマーケティングにおけるデータ活用の実現を目指します。
■背景
デジタルマーケティング領域においては、企業自身が保有する顧客情報や、他社が保有する関連情報など、複数の組織が持つデータを突合し分析を行うことが多くなっています。その際、パーソナルデータをローデータ(生データ、無加工データ)のまま扱うと、万一データ漏洩が発生した場合のリスクが大きいことから、プライバシー保護が重要なテーマとなっており、データを安全に統合分析する技術として、暗号化(秘匿化)したデータを使って計算処理ができる「秘密計算」が注⽬されています。この技術の活用により、プライバシー保護とデータ流通の両⽴が可能となり、Society5.0(※1)時代に必要な安⼼・安全なデータ社会の実現への貢献が期待されています。
このような状況を背景に、このたび、デジタルマーケティングサービスを提供するDACと秘密計算技術に強みを持つAcompanyは、秘密計算を⽤いたマーケティングデータ分析によって、安⼼・安全なマーケティング分析を実現するべく、今回の実証実験を行いました。
■実証実験詳細
DACの顧客企業が保有するデータとDACのDMP「AudienceOne®」(※2)のマーケティングデータに対して、Acompanyの秘密計算ソフトウェア「QuickMPC」(※3)を⽤いて暗号化された状態で『データ分析が可能か』、また『従来手法の分析結果と比較し、有効であるか否か』を検証しました。さらに、暗号化された状態でのデータ分析結果が実⽤レベルにあるかについても検証を行いました。
○検証方法
①クラウドサーバーに秘密計算環境を構築。
②分析対象のデータセットを、以下の通り準備。
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◆DACの顧客企業が保有するユーザーに対する『アンケート結果データ』(20代・30代の2種類)
・218,436点(72,812⼈ x 3属性)
・637,212点(212,404⼈ x 3属性)
◆「AudienceOne®」の同⼀のユーザーに対する『各種属性値とコンバージョン値のデータ』(20代・30代の2種類)
・871,255点(28,105⼈ x 31属性)
・2,550,649点(82,279⼈ x 31属性)
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③秘密計算環境下で、コンバージョン値と属性・アンケート結果の相関値を計算。
対照実験として、通常のローデータによる計算と比較。
○検証結果
・暗号化された状態でマーケティング分析が可能であることが確認できた。
・データの暗号化から分析完了までの処理にかかる時間が数分であることが確認できた。
・本実証実験での平均絶対誤差は、下記の表のとおり0.001未満であり、実務レベルにおいても有用であることが証明された。(一般的に、相関係数の性質として、絶対誤差が0.001未満であれば実用上問題がないとされている。)
上記の通り、本実証実験では、秘密計算環境下において暗号化されたデータの突合および分析が可能であることが明らかになりました。
今後DACとAcompanyは、より高度な分析に対し秘密計算環境下での実証実験を継続するとともに、共同ソリューションの開発や企業へのサービス提供により、プライバシー保護とデータの流通によるビジネス推進の両立を推進してまいります。
(※1)「Society 5.0」は、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において日本が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/
(※2)「AudienceOne®」は、オンラインデータに限らず、購買履歴や位置情報などのオフラインデータとも連携し、CRM、広告配信結果、パネルリサーチ結果など、さまざまなデータの統合や分析、可視化が可能です。また特許技術による、デバイスやチャネル間のクロスデバイス推定機能も特長です。これにより、豊富な連携チャネルを活用し、「新規顧客の獲得」から「既存顧客のLTV向上」までフルファネルで、高度なマーケティング環境を実現します。「AudienceOne®」が保有するデータには、性年代・年収などのデモグラフィックデータや、約1,400種類の興味関心データ(サイコグラフィックデータ)、専門領域に特化した「AudienceOne®」パートナー企業から提供されたデータ(Data Exchange)などが含まれます。https://solutions.dac.co.jp/audienceone
(※3)「QuickMPC」はデータを秘匿したまま統計分析・機械学習が実⾏可能な、マルチパーティ計算(Multi-party Computation:MPC)による秘密計算エンジンです。データの内容を知られることなく計算が実⾏できるため、個⼈情報や顧客データなどの機密情報を外部に知られることなく活⽤することができます。