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アプリ内広告の収益化の課題―サプライサイドとデマンドサイドからの視点

アプリ収益化の未来とは?

Liftoff カントリーマネージャー: 天野 耕太氏
PubMatic カントリーマネージャー: 廣瀬 道輝氏
聞き手: 高橋 裕梨奈(RTB SQUARE)

広告枠をリアルタイムで自動的に買い付けることができ、その透明性や効率の高さからグローバルで広く活用されているプログラマティック広告。

今回は、Liftoff Mobile株式会社のカントリーマネージャー・天野耕太氏と、パブマティック株式会社のカントリーマネージャー・廣瀬道輝氏をお迎えし、アプリ内広告の収益化の課題、またその解決の糸口となるプログラマティック広告の活用について前後編でお届けする。

ーまず、お二人の現在の業務内容をお聞かせください。

天野氏:LiftoffというアメリカのモバイルのDSPで、カントリーマネージャーとして日本と韓国の二カ国のビジネスを統括しています。

DSP事業社なので、チームとしてはあくまでも広告主/広告代理店といったデマンドサイドとの向き合いが中心ですが、私自身はメディアやPubMatic様を含むSSP事業社などサプライサイドと向き合い、信頼の置けるパートナー様から広告枠を調達する業務を行っています。

天野氏

廣瀬氏:アメリカに本社を持つPubMaticという会社で、日本のカントリーマネージャーとしてビジネスの統括をしています。メディア様やアプリデベロッパー様といった広告枠を提供しているサプライサイドをお客様として業務しております。

廣瀬氏

ー 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)影響下における現在のビジネス状況はいかがですか。

天野氏:実は広告主様へのネガティブな影響はあまりありません。グローバルでも、直接関わる二カ国でも、むしろ直近かなり好調に伸びているという状況です。

広告配信の際に主な指標となるCPM/CPIの動きを週次に公開していますが、ネット全体のPVが増加したことで配信面の単価がやや下がっていることで、結果的に広告主様がユーザー獲得を効率的にしやすい状況になっているのが現状です。

廣瀬氏:サプライサイドで言えば、パブリッシャー様の売上・広告収入という意味で大きく打撃を受けている地域はUSやEMEAで、APACでの影響は比較的少ない傾向です。特にアプリ内広告に関しては他の広告フォーマットに比べ影響が少ないことが当社の調査でも明らかになっています。

なかでも日本では売上自体Liftoff様と同様に好調でして、他の国々から比べると日本だけ突出して好調だと見られているような状況です。

ー「プログラマティック広告」という言葉が出てきましたが、改めてどのような手法なのか、アドネットワークとの違い等を教えてください。

廣瀬氏:まずプログラマティック広告の定義として「DSPとSSP間を利用して売買される広告」とします。デマンド/サプライの両サイドから見て、どのバイヤーがどの広告面を入札したか分かるという透明性の高い取引になります。

<プログラマティック広告取引>
RTBの仕組み

一方アドネットワークは、広告主様はどこかのアドネットワークに広告を出稿したとしても、どこの配信面に流れているのかをほとんど把握することができません。当然ブロックリストのような機能はある前提ですが、どこの配信面に出たかなどはブラックボックスになっているのが実情です。

<アドネットワーク取引>
アドネットワークの仕組み

天野氏:アドネットワークは、デマンドサイド・サプライサイド両方に面していますが、プログラマティックはデマンドサイドとサプライサイドの領域がきっちり分かれています。我々DSPの責任は明確に広告主様などデマンドサイドであり、PubMatic様を含むSSPはメディアやアプリデベロッパーなどのサプライサイド側に責任を持つことになります。そしてSSPとDSPはそれぞれ「パートナー」としてそれぞれの責任を果たすために連携をしています。

我々は広告主様の需要を満たすために、ここ数年では特にアドフラウド(広告表示に関する虚偽)対策をきちんと行うなど、高い透明性を持って成果をお伝えできるように取り組んでいます。この責任が明確で、透明性が高いことがプログラマティックならではだと思います。

ー 国内のアプリ内広告におけるプログラマティックの現状について教えてください。

廣瀬氏:Webの世界では4-5年ほど前までは、多数のメディアがアドネットワークを複数使ってマネタイズをしていました。その2、3年後にヘッダー入札というソリューションが現れて、マネタイズ手法がプログラマティック中心に大きくシフトしていきました。
RTB取引

今のアプリの状況はヘッダー入札を採用する前のWebメディアと近い状況だと思っています。グローバルでは既にアプリでもプログラマティックでのマネタイズは主流ですが、日本ではまだメインのマネタイズ手法ではないという印象があり、伸びしろだと思っています。

天野氏:グローバルでは既に広告主側もプログラマティック広告の特徴を理解し、広告配信を工夫しながら成果を上げている事例が多く存在します。一方で日本はまだそこまで理解度が高い状況ではありません。アドネットワークとDSPを並列に語られる事も多く、アドネットワークとDSPで重複して配信してしまうなど配信コスト面でも勿体無いケースも発生しています。

広告主様にとってもプログラマティックでアプリ在庫にきちんと配信することで成果が高まるなどメリットは大きいと思います。この点をしっかりとご説明させて頂きながら、普及に努めたいと思っています。

ー プログラマティック広告の理解促進にはどのようなことが必要ですか。

天野氏:国内のアプリの世界では今まさに理解促進をしていくフェーズであると思っています。

グローバルでは、既に「Walled Garden(※)は使いつつも、それ以外のパートナーとしてDSPを選定し、良質な広告在庫に配信をする」という考えが一般となってきており、プログラマティックの特徴を理解し効果的に使い分けをしています。

国内でプログラマティックを広めるためには、Walled Garden以外にも積極的に配信し広告効果を高めていきたいと考える方々と共に、DSP・SSP両側から理解を進めていく必要があると感じています。

廣瀬氏:まさに同意見です。日本のプログラマティック活用には課題がまだ多く、我々はよく”エデュケーション”という言葉を使いますが、「どうしてプログラマティックを使うべきなのか」「アドネットワークとの差異は何か」等をきちんとご説明をさせて頂き、理解を一緒に深めていくことが重要な時期だと考えています。

廣瀬氏

そして、アプリデベロッパー様などサプライサイドが収益を高めるためには、デマンドサイドの方にもプログラマティックの理解を深めて頂き、プログラマティックに予算を割いて頂く必要があるため、デマンドサイド向けの営業担当から、広告代理店様に当社の透明性に関する取り組みについて積極的に説明を行っています。

※Google,Facebook,Twitterに代表されるそのサービス内だけで広告配信が完結するクローズドプラットフォームのこと。

ー アプリマネタイズの課題とプログラマティック広告を採用するメリットについて教えてください。

天野氏:大きな課題の1つとして大きな予算を持つブランド広告がアプリ内広告で実施されていないことがあります。

COVID-19の影響もあり、さらに多くのユーザーがアプリゲームやマンガに可処分時間を使っているにも関わらずブランド広告が実施されていないことは、広告主様にとってもアプリデベロッパー様にとっても機会損失になっていると思います。
天野氏

アプリ内広告でブランド広告が実施されない理由はいくつかあると思いますが、主要因の1つが透明性です。アプリ内広告はアドネットワークが主流であるため、透明性を非常に重視するブランド広告を行う広告主は予算を割きづらい状態になっています。

廣瀬氏:先ほど天野様からあったようなアドフラウド対策に加え、広告や広告面の品質、そしてフィー(費用)の部分などでの透明性の欠如がアプリ内広告の大きな課題だと思っています。

アドネットワークの手法ですと、そのアドフラウドのような不正をどう計測し、排除するのかという点や、配信面のクオリティ、フィーの部分の詳細をアドネットワーク事業者側が開示できない場合があり、結果的にブラックボックスとなっているケースがあります。

プログラマティックを活用している広告主様は、その透明性が保たれていないと広告予算は流しませんという考えがブランド広告主を中心に増えてきており、特にブランド広告を出すような広告主様は敏感です。デマンドサイドのこのような要望に対してどう対策して予算を頂くかという点が、アプリ内広告にブランド広告を増やしていくための大きな課題だと思います。

広告の費用対効果だけでなくその課題をクリアし、ブランド広告予算をアプリ内広告に投下してもらうためにも透明性が高く、広告主様にもきちんと説明ができるプログラマティック広告は有用だと考えています。

・・・

後編では、上記に挙げたアプリ内広告収益化の課題に対して、PubMatic様の製品『OpenWrap SDK』の特長とともに、プログラマティックを活用した新たなソリューションについてご紹介します。

素材提供:https://www.freepik.com/free-photos-vectors/background


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