Coinhive事件、最終裁で逆転無罪~広告界に与える影響を考察~
最高裁判所は1月20日、仮想通貨のマイニングツール「Coinhive」を閲覧者に無断で自身のWebサイトに設置したとして、不正指令電磁的記録保管罪に問われていた、いわゆる「Coinhive事件」について、無罪と判断をしました。二審の有罪判決を破棄しての逆転無罪となりました。
今回の裁判では、サイト内に設置した仮想通貨をマイニングするプログラムコードが、刑法168条の2第1項のいう「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録(不正指令電磁的記録)」に当たるのかが争点となっていました。
判決次第では、ネット広告に関するプログラムコードも、同じようなCoinhiveと同類と見なされて、ネット広告業界にも大きな影響を起こす可能性がある裁判でもありました。
今回の無罪判決について、弁護士ドットコムの報道によると、サイト運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは「Webサイトによる情報の流通にとって重要」であり、「広告表示と比較しても影響に有意な差異は認められず、社会的に許容し得る範囲内」とした上で「プログラムコードの反意図性は認められるが不正性は認められないため、不正指令電磁的記録とは認められない」と結論付けたとしています。
結果として、Coinhiveのプログラムコードが無罪になったことで、広告に関するプログラムコードが同じように訴えられるリスクは低下したと考えられます。ただ、反意図性はある程度問題がなくても、不正性があると有罪になり得るため、プログラムコードがユーザーに与える影響次第では有罪になる可能性は当然にあります。
一方で、Webサイトの収益源としてネット広告以外にも、仮想通貨(暗号資産)のマイニングコードを設置するという選択が、公に認められたことによって、ユーザー体験を損ないかねない広告を表示するよりも、マイニングのコードを設置するWebサイト運営者が増加する可能性は秘めています。
Webサイトに設置される広告が減ることは、ネット広告市場の縮小と直結するため、今回の裁判の結果はネット広告にとってプラスの面と、新たな論点が登場した面の双方を持ち合わせていると言えそうです。